神者というのが私の名前です。
私の名前は神者（かんじゃ）です。
この珍しい名前を聞いて、多くの人は首をかしげるかもしれません。
実際、全国でこの名字を持つ人はわずか30人ほどしかいないのです。そう、私は日本で最も稀少な姓の一つを持つ者なのです。
神秘の名を背負って
幼い頃から、私の名前は周囲の注目を集めました。学校の名簿で読み上げられるたびに、教室中がざわつきました。
「神様」という文字が入っているせいか、何か特別な力でも持っているのではないかと冗談交じりに言われたこともあります。
しかし、この名前の真の意味を知ったのは、私が中学生の時でした。
祖父が古い家系図を見せてくれたのです。そこには、私たちの先祖が代々、神社に仕える神職であったことが記されていました。
京都の山奥に眠る秘密
私たちの家系のルーツは、京都府与謝郡与謝野町三河内という、都会からは遠く離れた山深い地域にありました。
そこには後藤神社という由緒ある神社があり、私の先祖たちはその神社で神を祀る重要な役割を担っていたのです。
祖父の話によると、平安時代から続く神社の歴史と共に、私たちの家系も歩んできたそうです。
神と人との仲介者として、祈祷を行い、神託を解釈し、神社の管理運営を行う。
そんな神聖な職務が、「神者」という名前に込められていたのです。
時を超える使命
現代に生きる私たちにとって、神道の役割は昔ほど大きくはありません。
しかし、この名前を持つ者として、私は日本の伝統文化との深いつながりを感じずにはいられません。
時には、この珍しい名前が重荷に感じることもあります。
しかし、先祖たちが守り続けてきた伝統の重みを考えると、この名前を誇りに思わずにはいられないのです。
未来へ続く物語
今、私は都会で働いています。
神社とは無縁の生活を送っていますが、休日には地元の神社を訪れ、静かに手を合わせます。
そんな時、遠い昔から続く血脈の鼓動を感じるのです。いつか、私にも子供ができるでしょう。
その時、この「神者」という名前と、その背後にある豊かな歴史を伝えていきたいと思います。
それが、この稀有な名前を授かった者の使命だと信じているのです。
私の名は神者。30人に1人の、神を祀る者の末裔。この名前が紡ぐ物語は、まだまだ続いていくのです。